Share

  • X
  • LINE
  • Facebook
2025.12.5

株式投資で得られるもの|大学生が株式投資をするメリットと意義とは

NISA制度が拡充された影響もあり、若い世代の間で投資への関心が高まっています。

大学生にとって、株式投資は資産運用の手段以外にも、さまざまな価値があります。社会に出る前に投資を経験することで、金融リテラシーはもちろん、経済への理解やビジネス感覚を身につけることができるのです。

この記事では、株式投資から得られる4つの具体的なリターンと、大学生が投資を始めることで得られるメリットについて詳しく解説していきます。

株式投資で得られる4つのもの

株式投資から得られるものは、大きく分けて4つです。それぞれが投資家にとって重要な意味を持ち、とくに大学生にとっては将来の財産となります。

将来の売却益(キャピタルゲイン)

キャピタルゲインとは、株式を購入時より高い価格で売却することで得られる利益です。たとえば、1株1,000円で購入した株式が1,500円に値上がりしたときに売却すれば、500円の利益を得られます。100株保有していれば5万円の利益となり、これがキャピタルゲインの基本的な仕組みです。

ただし、株価は常に変動するため、購入時より下がる可能性もあります。一般的に、高いリターンを狙うほどリスクも高くなるため、自分のリスク許容度に合わせた投資判断が必要です。

配当金(インカムゲイン)

配当金は、企業が事業で得た利益の一部を株主に還元する仕組みです。年に1〜2回支払われることが多く、保有株数に応じて受け取ることができます。

配当利回り(年間配当金÷株価×100)で投資効率を判断でき、たとえば配当利回り3%の株式を100万円分保有していれば、年間3万円の配当金を受け取れる計算になります。

配当金の魅力は、定期的な収入が得られることです。さらに、受け取った配当金を再投資することで複利効果が生まれ、長期的な資産形成につながります。

株主優待

株主優待は日本で特に広く行われている株主還元制度です。自社製品やカタログギフトなど、企業によってさまざまな優待が用意されています。

10万円未満の投資で株主優待を設定している企業も一定数あります。単純な金銭的価値だけでなく、投資している企業との繋がりを実感できる点も株主優待の魅力です。実際に優待を使うことで、経済的なメリットを得られるだけでなく、その企業のサービスや製品への理解も深まるでしょう。

投資経験という無形資産

株式投資から得られる最も価値のあるものは、実は金銭的なリターンではなく「投資経験」そのものかもしれません。実際に自分のお金を投資することで、経済の動きや企業の仕組みを肌で感じられます。ニュースで見る株価の変動が他人事ではなくなり、世界経済の動向に自然と関心を持つようになるでしょう。

この経験は、将来のキャリアにおいても大きな財産となります。ビジネスの現場で必要となる数字を読む力やリスクを評価する力、冷静な判断力などは、投資経験を通じて自然に身についていくものです。大学生のうちから投資を始めることで、これらの能力を早期に養うことができるのです。

投資経験がもたらす真の価値

株式投資の経験は、配当金や売却益といった直接的な利益を超えて、人生において長く活きる能力や視点を育ててくれます。

経済ニュースが自分ごとになる

投資を始める前と後では、経済ニュースへの関心度が高まります。これまで聞き流していた「日経平均株価」や「円安・円高」といった言葉が、身近に感じやすくなるでしょう。

なぜなら、これらの指標が自分の保有する株式の価値に直接影響するからです。たとえば、円安になれば輸出企業の株価が上昇しやすくなり、金利が上がれば銀行株に注目が集まるといった関係性を、実体験として理解できるようになります。

さらに、アメリカの雇用統計や中国の経済指標など、世界経済の動向にも自然と目が向くようになります。グローバル化が進む現代において、日本企業の業績は世界経済と密接に関わっており、投資を通じてこの繋がりを実感できるのです。

こうした経済への感度の高まりは、就職活動や将来のキャリアにおいて、アドバンテージとなるかもしれません。企業の採用面接で経済の話題が出たときに、自分の投資経験と結びつけて語ることができれば、ほかの学生との差別化にもつながるでしょう。

企業分析力とビジネス理解力が向上する

株式投資をするうえで避けて通れないのが、企業分析です。決算短信や有価証券報告書といった企業の開示資料を読むことで、売上高や営業利益などの財務指標の意味や重要性を学べます。

最初は難しく感じるかもしれませんが、繰り返し読むうちに企業の健全性や成長性を数字から読み取れるようになってきます。

この企業分析力は、就職活動における企業研究に直結します。投資家の視点で企業を分析する習慣があれば、その企業の将来性や自分のキャリアとの相性を、より深いレベルで判断できるでしょう。

リスク管理とお金の判断力が磨かれる

投資を始めると、ほぼ必ずといっていいほど、どこかのタイミングで損失を経験します。しかし、この損失経験こそが、お金に対する健全な判断力を養う最良の教材です。

「なぜ損をしたのか」「どうすれば防げたのか」を考える過程で、分散投資の重要性や感情的な判断の危険性などを、実感として理解できます。こうした経験を通じて、冷静な判断の重要性や、長期的な視点を持つことの大切さを学べるのです。

大学生が株式投資を始めるメリット

大学生のうちに投資を始めることで、将来の資産形成やキャリア形成に向けた土台を築くことができます。

時間を味方につけられる

投資においては、「時間(運用期間)」がある人ほど有利です。20歳から投資を始めた場合と30歳から始めた場合では、複利効果による資産の成長に差が生まれやすいためです。

たとえば、月1万円を年利5%で運用した場合、20歳から40年間続ければ約1,500万円になる計算ですが、30歳から30年間では約820万円となります(金融庁のつみたてシミュレーターによる試算)。

また、若いうちは投資で失敗しても、それを取り戻す時間が十分にある点も強みです。市場の変動を何度も経験することで、相場観や投資判断力が自然と身につき、リスクへの耐性も高まっていきます。

失敗のコストが比較的小さい

多くの大学生には、家族を養う責任や住宅ローンなどの大きな経済的負担がありません。このため、投資で損失を出したとしても、生活への影響は社会人と比べて限定的といえます。

アルバイト代の一部など、なくなっても生活に困らない範囲の資金で投資を経験できる点は、大学生ならではのメリットです。

実際に少額でも自分のお金を投資することで、教科書では学べない貴重な経験を積めます。1万円の損失であっても、その痛みと学びは将来100万円、1,000万円を運用するときの糧となるという考え方もできるでしょう。

キャリア形成への好影響が期待できる

投資経験は、就職活動において独自の強みとなる可能性があります。実際の投資経験を通じて得た企業分析の視点や経済動向への理解は、自分に適した企業選びや、面接での差別化要素になる可能性があるためです。

また、投資を通じて身につけた財務知識は、どのような業界で働く場合でも役立ちます。営業職であれば取引先の財務状況を理解できますし、企画職であれば事業計画の数字を読み解く力として活かせます。

さらに、投資経験があることで、職場でのビジネス会話の幅も広がります。上司や先輩との雑談で経済の話題が出たときに、自分なりの意見を述べることができれば、コミュニケーションの機会も増えるかもしれません。

リスク許容度を高められる

投資経験を積むことで、一般的に精神的なリスク許容度は大きくなります。実際に値動きを経験し、損失と利益の両方を体験することで、自分にとって適切なリスクの大きさを把握できるでしょう。

たとえば、最初は100円の損失でも動揺していた人が、経験を積むことで1万円の変動にも冷静に対処できるようになることがあります。このような精神的な成長は、市場の変動に一喜一憂せず、長期的な視点で物事を判断する力につながります。

まとめ

株式投資から得られるものは、キャピタルゲインや配当金といった金銭的なリターンだけではありません。むしろ大学生にとっては、投資経験を通じて身につく経済への理解力や企業分析力、リスク管理能力といった「無形の資産」のほうが、将来にわたって大きな価値を持つ可能性があります。

昨今は少額から始められる投資方法も登場しています。アルバイト代の一部など、無理のない範囲で経験を積むことも可能です。

ただし、投資にはリスクが伴うことを忘れてはいけません。元本割れの可能性もあり、すべての人に投資が向いているわけでもありません。まず金融や経済について学び、自分の価値観やライフプランに照らして、投資をするかどうかを主体的に判断しましょう。

柴田 充輝
執筆者
柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1000記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。