年金保険料の納付は、20歳以上の大学生にとって重い負担かもしれません。しかし、未納のまま放置すると、老後の年金額が大幅に減るだけでなく、若いうちに病気やケガで働けなくなったときの保障も受けられなくなってしまいます。
実は、経済的に納付が困難な学生のために、さまざまな支援制度が用意されています。この記事では、年金未納がもたらす深刻な影響と、大学生が利用できる学生納付特例制度などの対応策について解説します。
年金制度の趣旨をおさらい
日本の年金制度は、現役世代が高齢者を支える「賦課方式」を採用しています。みなさんが納めている保険料は、積み立てられるのではなく、現在の高齢者の年金として支払われているのです。
この仕組みは、世代間の助け合いによって成り立っています。また、年金制度は老後の生活を支える「老齢年金」だけではありません。病気やケガで働けなくなったときの「障害年金」、家族を残して亡くなったときの「遺族年金」という保障もあります。
つまり、年金は単なる老後の備えではなく、人生のさまざまなリスクに対する総合的な保険制度なのです。
保険料未納がもたらす将来への深刻な影響
大学生のみなさんにとって、老後の生活は40年以上先の話でピンとこないかもしれません。しかし、保険料を納めないことで将来どのような影響があるのか、具体的に知っておくことは重要です。
未納を続けると、老後の生活が経済的に困窮するだけでなく、若いうちに病気やケガをした場合の保障も受けられなくなります。
働けなくなっても少額の年金しか受け取れない
国民年金を40年間きちんと納めた場合、老齢基礎年金として月額約6万8,000円(毎年変動します)を受け取ることができます。しかし、20年間未納期間があると、およそ半分になってしまいます。
月3万4,000円では、充実した老後生活を送れない可能性があります。つまり、現役のころに年金保険料をきちんと納付しないと、生活に不自由さを感じてしまうでしょう。
年金の受給資格を得られない
年金を受け取るためには、保険料納付済期間と免除期間を合わせて10年以上必要です。
受給資格を満たさない場合、過去に納付した保険料がすべて無駄になってしまいます。たとえば9年11か月納付していても、追納しない限り1円も年金を受け取れないのです。
このような事態を避けるためにも、納付が困難な場合は必ず免除申請などの手続きをとることが大切です。
老後資金をすべて貯金で用意しなければならない
総務省の家計調査報告によると、65歳以上の無職世帯の平均支出は月約28万円です。 65歳から90歳まで25年間生きると仮定すると、約8,400万円が必要になります。
この金額を自力で貯めるには、22歳から65歳まで43年間、毎月約14万円を貯金し続けなければなりません。現実的に厳しい数字といえるでしょう。
障害年金・遺族年金を受け取れない
年金制度は老後だけでなく、若いうちの事故や病気にも対応しています。障害年金や遺族年金は、保険料を一定期間納付しており、病気やケガで日常生活や仕事に支障が出たときに支給される年金です。
たとえば、交通事故で車いす生活になった場合、障害基礎年金1級なら月額約8万5,000円、2級なら月額約6万8,000円を受け取れます(毎年変動します)。
しかし、保険料の未納期間があると、これらの保障を受けられません。障害状態になっても、自助努力で生活を送らなければなりません。
年金制度の本質は「保険」
年金の正式名称は「国民年金保険」です。この名前が示すとおり、年金制度の本質は保険なのです。民間の生命保険や医療保険と同じように、将来のリスクに備える仕組みといえます。
老齢年金
老齢年金は、想定以上に長生きしてお金が足りなくなるリスクに備える保険です。日本人の平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳まで延びており、90歳、100歳まで生きる可能性も珍しくありません。
老齢年金は「終身年金」であり、生きているかぎりずっと受け取れます。どれだけ長生きしても年金がなくなることはないため、老後の生活設計が立てやすくなります。
貯金だけで老後に備える場合、何歳まで生きるかわからないため、必要な金額を計算できません。年金があることで、このような長生きリスクを軽減し、安心して生活できるのです。
障害年金
障害年金は、病気やケガで働けなくなるリスクに備える保険です。対象となる病気やケガは幅広く、身体障害だけでなく、うつ病や統合失調症などの精神疾患、がんや糖尿病なども含まれます。
20歳前や学生時代に発症した場合でも、保険料納付要件を満たしていれば障害年金を受け取れます。障害等級1級なら年額約102万円、2級なら年額約81万円が支給される(金額は毎年変動します)ため、働けなくなっても一定の収入を確保できます。
遺族年金
遺族年金は、自分が亡くなったときに残された家族の生活を保障する保険です。
大学生には関係ないと思うかもしれませんが、将来結婚して家族ができたときに重要な社会保障になります。保険料を未納にしていると、万が一のときに家族を守れません。
納付が厳しいときに利用できる制度
経済的に保険料の納付が困難な場合でも、未納のまま放置してはいけません。日本の年金制度には、納付が困難な人のためのさまざまな支援制度があります。これらの制度を利用すれば、将来の年金受給権を確保できます。
免除制度
国民年金の免除制度は、所得に応じて保険料の全額または一部を免除する制度です。全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4段階があります。
免除期間も年金額に反映され、全額免除の場合でも国庫負担分(2分の1)は年金額に算入されます。未納とは違い、受給資格期間にもカウントされるため、必ず申請しましょう。
学生納付特例制度
学生納付特例制度は、所得に応じて保険料の納付を猶予する制度です。家族の方の所得は問われません。
申請は市区町村の年金窓口で行い、申請者本人の前年所得が一定以下であれば、在学中の間は保険料の納付が猶予されます。
若年者納付猶予制度
若年者納付猶予制度は、50歳未満で所得が少ない人を対象とした制度です。大学を卒業したあと、何らかの事情で保険料の納付が難しいとき、活用を検討しましょう。
本人と配偶者の前年所得が一定額以下の場合、保険料の納付を猶予してもらえます。
学生納付特例との違いは、学生でなくても利用できることです。大学卒業後、就職活動中やフリーターとして働いているときなど、収入が不安定な時期に活用できます。
追納制度
追納制度は、免除や猶予を受けた期間の保険料を、あとから納付できる制度です。10年以内であれば、過去の保険料をさかのぼって納付できます。
免除や猶予を受けた場合でも、追納することで将来受け取る年金額を満額に近づけることができます。
ただし、免除や猶予を受けた期間から3年度を経過した分から、保険料に加算金が加算されます。就職して収入が安定したら、できるだけ早く追納するとよいでしょう。
会社員と公務員は未納のリスクがない
会社員や公務員になると、厚生年金保険料が給料から天引きされます。そのため、自分で納付手続きをする必要がなく、未納になるリスクはありません。
厚生年金に加入すると、基礎年金に上乗せして厚生年金も受け取れるため、老後の年金額が増えます。また、障害年金や遺族年金も手厚くなるため、保障面でも有利です。
一方、フリーランスや自営業者になると、国民年金保険料を自分で納付しなければなりません。納付を忘れると未納になってしまうため、口座振替などを活用して確実に納付することが大切です。
まとめ
年金は老後だけでなく、障害や死亡時の保障でもある総合的な保険制度です。保険料を未納にすると、将来の年金額が減るだけでなく、若いうちの事故や病気のときも保障を受けられません。
経済的に納付が困難な場合は、必ず免除や猶予の申請をしましょう。大学生なら学生納付特例制度を利用すれば、在学中の納付を猶予してもらえます。申請せずに未納のまま放置すると、人生で起こり得るリスクに対処できない可能性があります。
将来の選択肢を狭めないためにも、年金制度を正しく理解し、適切な手続きをとることが大切です。「面倒だから」と放置せず、自分の将来のために今できることから始めていきましょう。


