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2025.7.17

【第8回】資産運用のゴール設定

~いつまでに、いくら必要かを逆算する~

こんにちは。
これまでに「投資の基礎」「金融商品の種類」「自分に合ったスタイルやリスク感覚」などを学んできました。
ここでいよいよ、資産運用の重要なポイントである「ゴールの設定」について考えていきましょう。

資産運用を始める前に、「自分は何のために、いくら必要なのか」を決めていないと、
迷ったり、不安になったり、途中でやめたくなったりするものです。

ゴールを明確にすることは、運用の“迷子”にならないためのコンパスのようなもの。
この記事では、目的別に「必要なお金」を逆算しながら、具体的な目標の立て方を身につけていきます。

なぜゴール設定が必要なのか?

たとえば、「貯金をする」という行動も、目的が「旅行のため」と「老後のため」では、必要な金額も期間も変わってきます。

これは資産運用でも同じです。
「何のために」「いつまでに」「いくら必要か」が明確でなければ、投資のリスクや方法も選びようがありません。

つまり、運用とは「なんとなくお金を増やすこと」ではなく、「明確な目標に向かって、計画的にお金を育てていくこと」なのです。

資産運用の目的は人それぞれ

あなたにとって、資産運用の目的はどれに当てはまりますか? まずはざっくりでいいので、思い浮かべてみましょう。

よくある目的の例

  • 数年後の一人暮らしや引越し資金
  • 海外留学や長期旅行
  • 社会人になってからのマイホーム頭金
  • 結婚式・出産・教育費など将来のライフイベント
  • 60代以降の老後資金
  • いざというときの生活防衛資金

目的が違えば、当然お金を積み立てる期間や用意すべき金額も違います。
それによって、選ぶべき金融商品や運用スタイルも変わってくるのです。

ゴールの立て方:3ステップで逆算する

ここからは、実際にゴール設定を行うためのステップを解説します。

ステップ1:目的と期限を決める

まずは、「何に使いたいのか」「いつまでに必要か」を言葉にしてみましょう。

例1:25歳で一人暮らしを始めたい
例2:30歳で結婚式を挙げたい
例3:60歳までに老後資金1,500万円を準備したい

ここでは、「なんとなくお金が欲しい」という抽象的な状態から、「○年後に○万円必要」という具体的なゴールに変えることが大切です。具体的な数字に落とし込んで目標を設定すれば、「どの程度のリスクを取る必要があるのか」を把握できます。

これにより、必要以上のリスクを取らずに、投資と向き合えるのです。

ステップ2:必要な金額を見積もる

次に、その目標を実現するのに必要な金額を調べます。
ネットで相場を検索するだけでも、おおまかな金額がわかります。

  • 一人暮らしスタート費用(家具・引越し含む):約50万円
  • 結婚式の自己負担:平均100〜150万円
  • 留学費用(半年):約200〜300万円
  • 子どもの教育資金:総額で1,000万~1,500万円程度
  • 老後のゆとりある生活資金:2,000万円程度

「まだ分からない…」という人は、まずは仮の金額で設定してみても構いません。実際にいくら発生するかは正確に把握できないうえに、そもそもライフイベントが発生するかも未知数です。「ざっくり、このくらいだろう」という検討をつけて、実際に動いていく中で、少しずつ調整していけばOKです。

ステップ3:月ごとの目標積立額を逆算する

最後に、「毎月いくら運用・貯蓄すればいいか?」を計算します。

計算式は以下の通りです。

毎月の目標額 =(必要な金額 − 現在の貯金)÷ 残りの月数

例:3年後に100万円必要で、現在の貯金が10万円ある場合
→(100万円 − 10万円)÷ 36ヶ月 = 月25,000円

この金額が、あなたの毎月の目標積立額です。
ここから「どうやってこの貯金額を捻出するか」を考えれば、無理なく現実的な資産形成ができます。「効率よく資産を増やすために、この金額の一部を運用できないか?」も考えると、自然と投資に関心が向くでしょう。

「貯金でいいのか?」「投資をすべきか?」の判断軸

ゴールの金額と期限が明確になったら、「どう貯めるか」「投資すべきか」の判断ができます。

以下は、一般的な判断基準です。

  • 1年以内に使うお金:普通預金が基本
  • 1〜3年以内:定期預金 や債券など、低リスクの運用
  • 3年以上先:投資信託や株式などを検討する

つまり、目標が遠ければ遠いほど、投資でお金を増やす“時間の余裕”があるということです。特に、分散投資を意識すると、株式は時間の経過とともに価値が上昇する傾向にあります。

短期的に必要なお金は「守る」ために、長期的な目標に向けたお金は「育てる」ために使い分けましょう。

ゴールを持つことが「継続のカギ」になる

ここまで読んで「ちょっと面倒くさそう」と思った人もいるかもしれません。

ですが、ゴールがないまま資産運用を始めると、途中で不安になったり、「このままでいいのかな?」と迷いがちです。また、「とにかく資産を増やす!」という考えだと、必要以上にリスクを取って、結果的に資産を失ってしまう事態になりかねません。

逆に、「自分はこの目的のために、月1万円を積み立てている」と言える人は、多少の値動きにも動じずに続けることができます。目標が明確であれば、「自分のやるべきこと」を理解でき、夢や理想の実現のために能動的に動けるでしょう。

資産運用はマラソンと同じで、走る理由(=ゴール)がなければ、途中で止まりたくなるものです。
だからこそ、ゴールを持つことは、最大のモチベーション維持装置になるのです。

まとめ:資産運用の第一歩は「目的を数字にすること」

お金は、「なんとなく貯めよう」「なんとなく増やそう」ではうまくいきません。
本当にうまくいくのは、「いつまでに、いくら必要か」が言語化できている人です。

今日のポイントをおさらいすると

  • 資産運用の目的を言語化しよう
  • 使いたい時期と金額から月の目標を逆算しよう
  • 投資と貯金は「目的の期限」で使い分けよう
  • ゴールがある人は、運用を“続けやすくなる”

まずは1つでいいので、自分の未来の目標を言葉にしてみてください。そして、「〇年後までに〇万円を貯めたい」「そのためには、毎月〇円の貯金が必要」「〇%で運用すれば、必要な金額は〇円になる」など、具体的にシミュレーションをしてみましょう。


そこから逆算するだけで、資産運用は一気に「自分ごと」になります。

次回予告

次回は、「投資信託って何?仕組みと選び方をわかりやすく解説」をテーマに、NISAや長期投資でもよく使われる「投資信託」について、しくみから商品選びのコツまで丁寧に解説していきます。

柴田 充輝
執筆者
柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1000記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。