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2025.7.17

【第10回】投資信託とETFの違いと使い分け方

~同じようで違う2つの選択肢~

こんにちは。
前回は、初心者でも取り組みやすい「投資信託」について解説しました。
今回はその続きとして、よく似た仕組みを持つ「ETF(上場投資信託)」との違いと使い分けについて学んでいきます。

「投資信託とETFって、何が違うの?」
「初心者はどっちを選ぶべき?」
そんな疑問にお答えしながら、自分に合った資産運用スタイルを見つけるための判断軸をお届けします。

ETFってそもそも何?

ETF(Exchange Traded Fund)は、簡単に言うと証券取引所に上場している投資信託です。
投資信託と同じように、たくさんの人のお金をまとめて、運用のプロが株や債券などに分散投資します。ただし大きな違いは、リアルタイムで売買できるという点です。ETFは株式のように証券市場で自由に売買でき、価格も常に変動しています。
つまり、ETFは投資信託と株の“いいとこ取り”のような存在と言えるでしょう。

投資信託とETFの違いまとめ

項目投資信託ETF(上場投資信託)
購入場所証券会社(ネット/店頭)証券会社(主にネット証券)
売買タイミング1日1回(基準価額)株式と同様、リアルタイムで取引可能
最低購入金額100円〜数千円〜数万円(1口単位)
自動積立機能あり(NISAのつみたて投資枠にも対応)原則なし(手動での購入が必要)
手数料信託報酬(年0.1〜1.0%程度)
信託報酬+売買時の取引手数料あり
配当の扱い自動再投資が基本現金で分配されるケースが多い
向いている人投資初心者、忙しい人、少額から積立したい人株の売買に慣れてきた人、タイミングを見たい人

また、投資信託は「口数指定(〇口買います)」「金額指定(〇円分買います)」という注文方法です。一方で、ETFは「指値(〇円以下で買います)」「成行(今現在に近い価格で買います」という注文方法です。

実際に買うときに備えて、それぞれの注文方法もざっくりとイメージしておきましょう。

それぞれのメリット・デメリットを整理しよう

投資信託とETF。どちらも「プロに任せて分散投資ができる」という点では共通していますが、
使い勝手や目的に応じて向き不向きが大きく変わってきます。ここでは、より具体的に整理してみましょう。

投資信託のメリット

投資信託は、誰でも・少額から・自動でコツコツ始められる点が大きな魅力です。
投資に慣れていない人や、日々の相場に張り付く時間がない人にとって、使いやすい金融商品です。

  • 自動積立が可能で、生活習慣として定着しやすい
  • 100円〜と少額から始められ、学生や初心者でも安心
  • NISAなどの制度と相性がよく、長期投資に適している

投資信託によっては、分配金を自動で再投資してくれます。買い付ける設定をしたうえで、分配金再投資型の投資信託を購入すれば、手間をかけずに効率よく資産形成ができます。

投資信託のデメリット

  • 価格がリアルタイムではなく、取引タイミングを自分で調整できない
  • 手数料(信託報酬)が高めの商品もあり、注意が必要

投資信託はリアルタイムで価格が変動しているわけではないため、状況を見ながら希望価格で購入する、という対応ができません。

一般的に、信託報酬はETFよりも投資信託のほうが高めです。信託報酬は商品ごとに異なりますが、購入前には信託報酬を確認しておきましょう。

ETFのメリット

ETFは、自分の判断でタイミングを見ながら運用したい人にとって、自由度の高い選択肢です。

  • 株と同じようにリアルタイムで取引できる
  • 手数料が安いETFが多く、特に海外ETFはコスト効率が良好
  • 配当金を現金で受け取れるため、収入源として活用も可能

リアルタイムで「この価格で買いたい!」と考えている方には、投資信託よりもETFのほうが向いています。ETFであれば、「タイミングを見て、1円でも安く買う」という対応が可能です。

また、信託報酬は投資信託のよりもETFのほうが低い傾向にあります。手数料の差は、運用期間が長くなるほど大きくなるため、コスト意識が高い方にもETFが向いています。

ETFのデメリット

  • 自動積立ができず、購入ごとに手動の対応が必要
  • 購入単価が高めの商品もあり、少額投資にはやや不向き
  • 制度や課税の仕組み(特に海外ETF)を理解しておく必要がある

一部の証券会社では、ETFの自動積立が可能です。しかし、自動積立に対応していない証券会社が多いため、投資信託よりも手間がかかるデメリットがあります。

ETFは金額指定で購入できないため、投資信託のように「100円から試す」という方法がありません。基本的に、ETFは1万円以上からしか買えない点は押さえておきましょう。

実際の活用例

投資信託とETFは、それぞれに適した使い方がありますが、最終的には「自分の生活」「性格」「目的」に合っているかが選ぶ基準になります。

ここでは、ライフスタイルや経験に応じた3つの典型的なケースをもとに、それぞれの選び方とその理由を解説します。

ケース1:大学生Aさん(初心者・アルバイト収入あり)

プロフィール

  • 投資経験:なし
  • 月収:アルバイトで約5万円
  • 投資目的:5〜10年後のライフイベント(引越し・留学・結婚など)に備えたい
  • 投資にかけられる時間:月1回程度の見直しが限度
  • 性格:慎重派、細かいことは苦手。習慣でコツコツ続けたい

おすすめスタイル:NISAのつみたて投資枠 × インデックス型の投資信託

理由:このAさんのように投資初心者で、まとまった資金も時間もない学生にとっては、投資信託が向いています。
特に、NISAの「つみたて投資枠」を活用すれば、非課税で資産を増やせます。月々1,000円から自動で積み立てができるため、無理なく投資を習慣化できるでしょう。

また、プロが運用してくれる投資信託であれば、経済の知識がまだ浅い状態でも安心して資産を預けられます。
投資を「頑張って運用するもの」ではなく、「生活の一部として自然に続けられるもの」として取り入れやすいため、忙しい学生生活の中でも継続が可能です。

ケース2:社会人Bさん(投資経験あり・給与収入+ボーナスあり)

プロフィール

  • 投資経験:株式や投資信託を2年ほど経験済み
  • 年収:約400万円
  • 投資目的:将来の資産形成+配当収入を活かしたセミリタイアも視野
  • 投資にかけられる時間:週に数時間、ニュースやチャートもチェックできる
  • 性格:分析が好き。タイミングや商品を自分で選びたい

おすすめスタイル:ETF(特に米国ETF)を中心に、投資信託との併用も検討

理由:Bさんのように、ある程度の投資経験と分析力があり、自分で売買のタイミングを判断できる人にはETFが向いています。
ETFは株式のようにリアルタイムで売買ができるため、相場状況を見ながら柔軟に取引したい人にとっては便利です。

また、米国ETFの中には手数料が極めて低い商品が多く、長期保有でもコストを抑えて効率的に運用ができます。社会人になって給与を得て、安定的に家計運営ができるようになったら、ETFの購入も検討するとよいでしょう。

判断材料のまとめ

最後に、投資信託とETFの選び方のポイントを整理しましょう。

判断基準投資信託が向いている人ETFが向いている人
投資経験初心者・これから学びたい人経験あり・自己判断で取引できる人
投資金額少額から始めたい(月1,000円〜)ある程度まとまった金額を投入したい
継続スタイル自動でコツコツ積み立てたいタイミングを見て柔軟に売買したい
手間極力かけたくない(放置したい)情報収集やチャート分析が苦ではない
配当収入特に必要ない(再投資したい)配当を得たい(収入に活かしたい)
投資目的長期的な資産形成がメイン戦略的に資産を動かしたい/配当も狙いたい

貯金感覚で資産を増やしたい人は、毎月決まった日に決まった金額が自動で積み立てられる投資信託が向いています。「何から始めればいいか分からない」と思いながらも、将来のために資産形成したいと考えている方でも、安心して始められるでしょう。

「自分で判断したい」「投資を趣味の一つとして楽しめる人」は、リアルタイムで取引ができるETFが向いています。また、できるだけコストを抑えたいと考えている方も、ETFのほうが好相性でしょう。

まとめ:スタイルに合った投資が成功への近道

投資信託もETFも、どちらも優れた資産運用の手段です。
大切なのは「自分に合ったほうを選ぶこと」、そして「始めたあとに続けられる仕組みを持つこと」です。いずれの場合も、「長期投資」「分散投資」を意識すれば、安定したリターンが期待できます。

投資を習慣にしたいなら投資信託、運用を自分の手で動かしたいならETF。
無理のない選択で、着実に資産形成を進めていきましょう。

次回予告

次回は、「長期・分散・積立ってなぜ大事?資産形成の3原則を解説」をテーマに、
投資の成功に欠かせない“王道の戦略”を理論と実例で学んでいきます。

柴田 充輝
執筆者
柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1000記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。