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2025.7.17

【第7回】あなたのリスク許容度を診断してみよう

~投資スタイルを自分で見極めるために~

こんにちは。
前回は、「短期投資と長期投資のどちらが自分に向いているか?」というテーマを扱いました。
今回はそこからさらに一歩進んで、あなた自身の「リスク許容度」を診断し、より具体的に適した投資スタイルを見極めていく内容です。

投資は、知識や手法だけでなく、「どれくらいのリスクに耐えられるか?」が成功を分ける大きな要素です。「投資はリスクが伴う」という大前提を理解したうえで、自分はどの程度のリスクに耐えられるのかを、客観的に分析しましょう。


この記事では、簡単な質問形式の診断を通して、自分の「リスク耐性」や「心地よい投資の深さ」を把握してみましょう。

そもそも“リスク許容度”って何?

「リスク許容度」とは、投資においてどれくらいの損失を受け入れられるか、自分の精神的・経済的な“耐性”のことです。

このリスク許容度には以下の3つの視点があります

  1. 経済的リスク許容度:損失が生活にどの程度影響するか
  2. 精神的リスク許容度:損失をどれくらい冷静に受け止められるか
  3. 時間的リスク許容度:どれだけ運用に時間をかけられるか

この3つのバランスによって、「自分に合ったリスクの取り方」や「最適な投資スタイル」が決まります。

リスク許容度を理解することで、自分に合った投資方法を選び、ストレスを感じずに投資の判断を行えます。

損失が発生してパニックになってしまう事態を防ぎ、賢い選択をするためにも、リスク許容度の把握は欠かせません。

リスク許容度チェックリスト(5問)

まずは以下の質問に直感で答えてみてください。
A~Cの回答から、あなたの“リスクタイプ”を診断します。

Q1. 投資で10万円が1ヶ月後に5万円に減ったら、どう感じますか?

A:すぐ売って損切りしたい
B:もう少し様子を見る
C:長期的に回復すればOK、気にしない

Q2. どのくらいの損失までなら冷静でいられそうですか?

A:1万円以内
B:5万円前後
C:10万円以上でも大丈夫

Q3. 投資にかけられる時間はどのくらいありますか?

A:週に数時間はチャートやニュースを見たい
B:月に数回ならチェックできる
C:基本は放置したい(自動運用が理想)

Q4. 自分のお金をどんなふうに育てたいですか?

A:短期で増やしたい(スピード重視)
B:リスクも成長もバランスよく取りたい
C:ゆっくりでいいから確実に増やしたい

Q5. 投資についての学習意欲は?

A:本やYouTubeなどで日々学んでいる
B:必要な情報だけチェックしたい
C:できれば手間をかけずに任せたい

診断結果

それでは、あなたの回答の中で最も多かった選択肢を見てみましょう。

【Aが多いあなた】
リスク積極型(アクティブタイプ)
あなたは「利益を得るためにはある程度のリスクは許容できる」という考え方を持っています。短期投資や個別株など、値動きのある商品を楽しみながら扱える可能性があります。

【Bが多いあなた】
リスク中立型(バランスタイプ)
リスクも気になるが、成長も重視したいという、投資スタイルとして最もバランスのとれた思考を持っています。値動きがありつつも長期的に安定しやすい商品をコツコツと積み立てていくスタイルが向いています。

【Cが多いあなた】
リスク回避型(ディフェンシブタイプ)
あなたはリスクよりも安定や安心を重視するタイプです。資産が目減りしないことが第一なので、保守的な運用からスタートするのが向いています

タイプ別の投資アドバイスまとめ

それぞれのタイプ別に、特徴や向いている可能性が高い金融商品をまとめました。

タイプ特徴向いている商品
アクティブタイプリスクOK/利益重視株式
バランスタイプ成長と安定をバランス重視投資信託
ディフェンシブタイプ安定・安心が最優先債券/保険型商品

なお、これらはあくまでもイメージであり、必ずこの方法で投資をしなければダメ、というわけではありません。

ライフステージが変化したり、投資経験を積んだりすることでリスク許容度は変化するため、その時々に応じて最適なリスクを取ることが大切です。

リスク許容度を決める要素

なお、リスク許容度は、以下のようにさまざまな要素を複合的に評価して決定します。

要素リスク許容度が高い人リスク許容度が低い人理由・補足
年齢若い(20~30代)高齢(50代以上)若いほど失敗から回復する時間がある
収入高収入・安定収入低収入・不安定収入余裕資金が多いほどリスクを取れる
家族構成独身・子供なし家族あり・子供あり養う家族がいると安定を重視する必要がある
貯蓄額十分な貯蓄あり貯蓄が少ない緊急時の備えがあるとリスクを取れる
投資経験経験者初心者・経験不足経験があると冷静に判断できる
性格楽観的・冒険好き慎重・心配性個人の性格が大きく影響
投資目的資産増加・余裕資金老後資金・教育資金目的が重要なほど安全性を重視
投資期間長期(10年以上)短期(数年以内)長期投資ほど一時的な損失を許容できる
知識レベル金融知識が豊富知識が少ない理解していないものはリスクが高く感じる
職業安定した職業不安定な職業本業の安定性が投資姿勢に影響

投資でリスクを取り過ぎてはいけない理由は、生活への影響が出てしまう可能性があるからです。生活費や緊急時の貯金まで投資に回してしまうと、株価が下がった時に生活が立ち行かなくなります。

また、必要以上にリスクを取ると、値動きに一喜一憂してしまいます。株価が下がると「もう我慢できない」と慌てて売却し、上がると「もっと上がる」と欲張って追加投資する。これでは「安く買って高く売る」という投資の基本とは逆の行動を取ってしまいがちです。

自分のリスク許容度を把握せずに投資をすると、感情的な判断で失敗してしまう可能性が高まります。無理をせず、自分の生活に合ったペースで続けましょう。

ライフステージ別リスク許容度の変化例

事例をもとにして、リスク許容度をどのように判断すればよいのか、考えてみましょう。

大学生時代

状況

  • 親からの仕送りとアルバイト収入
  • 一人暮らし、扶養家族なし
  • 将来への不安はあるが時間はたっぷり

大学生の頃は、比較的リスク許容度は高めです。若い人ほど失敗しても立ち直る時間が十分にあるため、一般的にはリスクを取りやすいためです。

独身で責任を負う相手もいないため、積極的に資産運用を行いやすいでしょう。

社会人1年目

状況

  • 初任給22万円、一人暮らし
  • 奨学金の返済が始まる
  • 社会人としての基盤作りが必要

社会人1年目は、大学生とほぼ同じ程度のリスク許容度があります。安定した収入を得られるようになった一方で、一人暮らしを始める場合は収支バランスを意識する必要があります。

黒字家計を維持できている場合、積極的にリターンを狙える精神的な余裕を持てます。

結婚・新婚時代

状況

  • 年収400万円、共働き世帯年収700万円
  • 住宅購入を検討中
  • 将来の子育て費用を意識

結婚後、専業主婦(夫)世帯になる場合は扶養家族が増えるため、リスク許容度は低くなります。一方で、共働きを継続する場合、結婚前と同程度のリスク許容度を維持できるでしょう。

ただし、将来の子育てや住宅購入を考えると、ある程度慎重な判断が求められます。夫婦で今後のライフプランについて話し合いながら、貯金と投資のバランスを考えることが大切です。

子育て期(32歳)

状況

  • 第一子誕生、妻は育児休暇中
  • 世帯年収が一時的に減少
  • 教育費の準備が必要

子どもが誕生し、まだ小さいうちは将来の生活費や教育費を用意する必要があります。ある程度リスク許容度が小さくなるため、必要に応じて生命保険への加入を検討しましょう。

投資で将来の教育資金を用意しつつも、確実性が高い定期預金や債券などの資産も、有効活用すべきフェーズです。

子育て充実期

状況

  • 子供2人、妻も職場復帰
  • 年収500万円、世帯年収800万円
  • 教育費のピークが近づく

子育て充実期になると、子どもの数が増えている可能性があります。広い家に住むために、マイホームを購入しているかもしれません。

住居費や教育費を確実に用意する必要があるため、リスク許容度はさらに小さくなるでしょう。たとえば、投資は教育費のための積立投資に限定し、リスクの高い商品は避けるような対策が求められます。

診断はスタート地点にすぎない

リスク許容度の診断は、あくまで「今のあなたの傾向」を知るための目安です。
生活状況や収入、経験値が変われば、あなたの許容度も変化していきます。

先ほどの例で示したように、ライフステージの変化に応じてリスク許容度は異なります。これらの状況に加えて、投資経験や保有している資産額などもリスク許容度に影響するため、その時々に応じて適切な資産運用方法を考えましょう。

大切なのは、「自分がどんな運用にストレスを感じるか」を早い段階で知り、“無理なく続けられる方法”を選ぶこと。

  • 自分のタイプに合った投資スタイルから始める
  • 少し慣れてきたら別のタイプにもチャレンジしてみる
  • 知識と経験を積みながら、スタイルを少しずつ進化させていく

この柔軟な姿勢が、長く投資を続けるための土台になります。

まとめ:自分の“心地よさ”が、最適な投資スタイルのヒント

投資において「自分に合っていること」を知るのは、利益を得る以上に重要です。リスク許容度は個人差があることに留意し、「自分にとって最適な方法」を考えることが大切です。

誰かの成功法則をマネするのではなく、自分にとっての“ちょうどいいリスク”を見つけること。
そのために、今回のような診断はとても有効な第一歩です。

焦らず、じっくり、自分のスタイルを築いていきましょう。

次回予告

次回は、「資産運用のゴール設定 ~いつまでに、いくら必要かを逆算する」をテーマに、
自分の将来の夢やライフプランに合った“目的別の資産形成”を具体的に考えていきます。

柴田 充輝
執筆者
柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1000記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。