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2025.7.28

【第12回】どれだけ増える?資産運用のシミュレーションで未来を見てみよう

〜数字で未来を“自分ごと”にする〜

こんにちは。
前回は、資産運用の基本である「長期・分散・積立」の重要性について学びました。
今回は、その3つの原則がどれほど効果的かを、具体的な数値シミュレーションを通じて確認していきます。

投資ではよく「複利が大事」「早く始めると有利」と言われますが、実際に数字で見ることで、その意味をよりリアルに理解できるようになります。
この記事では、「毎月いくら投資するか」「何年続けるか」「どんな利回りで運用するか」によって、将来の資産がどう変化するのかを分かりやすく紹介していきます。

資産運用シミュレーションの前提知識

まずはシミュレーションを理解するうえで必要な、3つの基本的な用語を確認しておきましょう。

  • 元本(投資額):毎月いくら積み立てるか、あるいは最初にどれだけ投資するか。
  • 期間(運用する年数):何年間にわたって積み立てと運用を続けるか。長いほど複利の効果が大きくなる。
  • 年利(利回り):年間でどれくらい資産が増えるかを示す割合。

月1万円を積み立てたら、どれくらい増えるのか?

もっともシンプルなパターンでシミュレーションしてみましょう。
 「月1万円を年利3%で20年間運用する」という条件の場合、次のような結果になります。

  • 元本(積立合計):1万円 × 12ヶ月 × 20年 = 240万円
  • 運用結果:約330万円(約90万円の利益)

たった月1万円でも、20年続ければ90万円近い運用益が期待できることが分かります。

さらに年利が高ければどうなるでしょうか?

年利ごとの違いを比較してみよう(月1万円×20年)

年利総資産額(約)増加分
1%約266万円+26万円
3%約330万円+90万円
5%約412万円+172万円
7%約509万円+269万円

利回りが2%上がるだけで、20年後の結果には100万円以上の差が出てくることもあります。
これはまさに「複利の力」と「時間の影響」を実感できる一例です。

ただし、利回りが高いということは、大きなリスクをとって運用していることを意味します。高い利回りは魅力的ですが、自分のリスク許容度の範囲内で投資を行う必要がある、という前提は必ず押さえておきましょう。

大学生の生活スタイル別3パターンシミュレーション

ここからは、実際の大学生の生活スタイルをもとに、「どれくらいの金額を投資に回せるか」→「それを続けたらどう増えるか」を見ていきます。
無理のない金額で設定していますので、自分に近いタイプを探して参考にしてみてください。

ケース1:節約派タイプ(堅実で将来志向)

収入内訳
 仕送り:50,000円
 アルバイト:30,000円
 合計:80,000円/月

支出内訳
 実家暮らし(家賃なし)
 食費:20,000円
 交際費・趣味:10,000円
 通信費・雑費:10,000円
 支出合計:40,000円

投資可能額
 毎月10,000円(残りの3万円は貯金など)

生活スタイル
 支出を抑えて将来に備えるタイプ。派手な出費をせず、計画的に行動するのが得意。

シミュレーション:月1万円 × 年利3% × 30年間
結果:約582万円(+222万円) → このように、学生のうちから堅実に積み立てていくと、30年後には600万円近い資産になる可能性があります。

ケース2:平均的タイプ(バランス型)

収入内訳
 仕送り:30,000円
 アルバイト:50,000円
 合計:80,000円/月

支出内訳
 家賃:30,000円(下宿)
 食費:15,000円
 交際費・趣味:20,000円
 通信費・雑費:10,000円
 支出合計:75,000円

投資可能額
 毎月5,000円

生活スタイル
 交友関係や趣味にもある程度お金を使いながら、貯金や将来の備えも意識しているバランスタイプ。

シミュレーション:月5,000円 × 年利3% × 30年間
結果:約291万円(+111万円) → 月5,000円でも、30年続けることで100万円以上の利益が見込めます。投資額は少額でも、着実に運用をすることが将来のゆとりをつくることが実感できるシナリオです。

ケース3:消費重視タイプ(今を楽しむ)

収入内訳
 仕送り:40,000円
 アルバイト:60,000円
 合計:100,000円/月

支出内訳
 家賃:40,000円
 食費:20,000円
 趣味・推し活:25,000円
 通信費・交通費など:10,000円
 支出合計:95,000円

投資可能額
 毎月3,000円(収支ギリギリの中で工夫して捻出)

生活スタイル
 ライブや趣味、推し活など「今を充実させたい」意識が強いタイプ。支出は多めだが、将来への不安も感じている。

シミュレーション:月3,000円 × 年利3% × 30年間
結果:約174万円(+66万円) → 今を楽しむ生活の中でも、たった3,000円を投資に回すだけで、将来的には70万円近くの利益が生まれます。無理をせず「未来への仕送り」として取り入れてみましょう。

シミュレーションの注意点

ここで紹介した数値はあくまでシミュレーション上のものです。実際の投資には次のような注意点があります。

  • 利回りは一定ではなく、年によって増減することがある
  • 積立を途中でやめれば、予定より利益が減る可能性がある
  • 物価上昇(インフレ)によって、将来の実質的な価値は目減りする可能性がある

株式や債券などのリスク資産は、将来どのような値動きをするか予測が難しく、「将来の不透明さ」そのものがリスクになります。ただし、そうしたリスクがあるからこそ、預貯金以上のリターンを期待できるという側面もあるのです。 未来は常に不確実だからこそ、無理なく続けられる金額で、時間をかけてじっくり育てていくことが大切です。「手元のお金に余裕があるときは投資額を増やす」「一時的に家計が苦しいときは投資額を減らす」など、柔軟に投資額を変更しながら、自分のペースで投資と向き合っていきましょう。

まとめ:数字で見ると、投資は現実的になる

  • 投資額が少なくても、時間を味方にすれば100万円以上の差が生まれる
  • 早く始めた人ほど、複利の恩恵を最大限に受けられる
  • 自分の生活スタイルに合わせた金額で「できる範囲から始める」ことが大切

何万円もの利益が出るのは、一見遠い話に思えるかもしれません。しかし、長期投資による複利効果を考えると、「月1,000円」「月3,000円」からでも投資を始める価値は十分にあります。
それが将来、あなたを助けてくれる“もう一人の自分”を育てる行動になります。

次回予告

次回は、「自分に合った資産運用スタイルを見つける方法」をテーマに、性格やライフスタイル、目標に応じた投資の選び方について詳しく解説していきます。

柴田 充輝
執筆者
柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1000記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。