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2025.7.28

【第11回】長期・分散・積立ってなぜ大事?

~資産形成の“王道3原則”をわかりやすく解説~

こんにちは。
これまで、投資信託やETF、つみたてNISAなど、さまざまな投資手段や制度について学んできました。
ただ、どんな商品や制度を使うにしても、「どんな考え方で運用するか」がしっかりしていなければ、うまく成果を出すことはできません。

今回のテーマは、投資の成功を左右する基本原則である「長期・分散・積立」。
これは、多くのプロ投資家や金融庁も推奨する「資産形成の王道」です。

この記事では、それぞれの意味とメリットを一つずつ掘り下げながら、なぜこの3つが資産運用の柱になるのか? どう活用すべきか? をわかりやすく解説していきます。

「長期・分散・積立」はなぜ“鉄板戦略”と呼ばれるのか?

資産運用の世界では、「長期・分散・積立を守っていれば、誰でも成功できる可能性がある」と言われることがあります。
これは、過去の膨大なデータや市場の歴史にも裏打ちされており、多くの投資家が実践してきた「理にかなった基本戦略」とされています。

この3つの原則を忠実に守った投資のほうが、長い目で見れば成果が出やすいことが、多くの研究やシミュレーションでも証明されています。 では、それぞれを詳しく見ていきましょう。

① 長期:時間を味方につけて“複利”を活かす

資産運用の中でも、もっとも基本でありながら強力なのが「長期的に投資を続ける」という戦略です。
なぜなら、時間が経つほどに「複利の力」が効いてくるからです。

複利とは、元本だけでなく「得られた利益にも利息がついていく」仕組みです。最初のうちは増え方が緩やかですが、時間が経つにつれて加速度的に資産が膨らんでいくのが特徴です。
これは「お金がお金を生む」状態が何度も繰り返されるからこそ実現する効果であり、長く続けること自体が最大の武器になるのです。

また、長期投資には心理的なメリットもあります。
短期的な値動きに一喜一憂する必要がないため、一時的に損失が出てもパニックになりません。もともと「数十年」というスパンで運用を考えることで、少々の下落にも動じずに投資を続けられる心の安定が得られます。

投資をする際に「やってはいけないこと」の一つに、暴落したタイミングで焦って売却してしまうことが挙げられます。これをやってしまうと、損失を確定させてしまうだけでなく、その後の回復局面を逃してしまいます。

つまり、資産を増やすどころか、減らしてしまうのです。

大学生や若い世代が“今すぐに大金を作る”のではなく、将来の選択肢を広げるために始める長期投資は、人生設計そのものを支える土台にもなり得るのです。

② 分散:リスクを減らすための“分ける”工夫

投資にはリスクがつきものです。値上がりすることもあれば、値下がりすることもあります。
この「下がるリスク」に備える方法として最も基本的で効果的なのが「分散投資」です。

分散とは、ひとつの資産や企業、あるいは国や地域などに投資先を集中させず、「いくつかに分けて投資すること」を意味します。
たとえば、全財産を1社の株に投資してしまえば、その会社が業績悪化したときに大きなダメージを受けます。
でも、複数の会社や資産に分けておけば、仮に一部が値下がりしても、他の資産が上がることで全体のダメージを抑えられる可能性が高まります。

また、分散は「資産の種類」「地域」「時間」の3つの視点で考えることができます。

  • 資産の種類:株式と債券のように性質の異なる資産に分ける
  • 地域の分散:日本だけでなく、米国や新興国などにも投資する
  • 時間の分散:一度にまとめて投資せず、少しずつ購入する(積立)

投資のベストタイミングは、プロでもわかりません。大雑把に言えば、「どの資産がいつ値上がりするかはわからないから、分散して購入する」という発想です。

つまり、分散投資とは「どんなときでも慌てないための準備」です。
未来の不確実性に対して、あらかじめリスクを小さくしておくこの工夫は、初心者こそ意識して取り入れるべき発想なのです。

積立:感情に左右されず“習慣で増やす”

投資において“継続すること”は成功の鍵ですが、最も難しいのも「続けること」です。
なぜなら人は、相場が上がると欲が出て、下がると怖くなってやめたくなる生き物だからです。
 そうした「感情のブレ」に左右されずに投資を続けるために有効なのが「積立投資」です。

積立とは、あらかじめ決めた金額を毎月コツコツと自動で投資していく仕組みです。
このやり方の最大の強みは、相場の上下に関係なく、機械的に買い続けられること
 「高いときには少なく買い、安いときには多く買う」という平均化の効果(ドルコスト平均法)も得られるため、長期的にはリスクを抑えて運用できます。

さらに、積立投資は「生活の一部」に組み込める点も魅力です。
一度設定すれば、あとは自動で資産が積み上がっていくので、毎月の給与やアルバイト収入、就職後は毎月の給与から貯金感覚で資産形成が可能になります。
忙しくて勉強や仕事で手一杯な学生や社会人にとっては、負担が少なく、自然と続けやすい方法といえるでしょう。

これら3つの原則はどう組み合わせるべき?

「長期・分散・積立」という3つの原則は、どれか1つだけでも投資の成功率を高める要素になりますが、3つを組み合わせることでその効果は何倍にも膨らみます

たとえば、積立だけを実践していても、1年程度の短期では市場の上下に左右されて損をしてしまうことがあります。
しかし、「積立×長期」によって時間の経過と複利の力を活かせば、一時的な下落に惑わされずに資産を育てることができます。

また、たとえ長期で運用していても、投資先が1社や1商品に偏っていれば、倒産や業績悪化といった個別リスクにさらされる可能性があります。
そこに「分散」の考え方を取り入れることで、リスクを抑えながら運用を継続しやすくなります。このように、それぞれの原則を組み合わせることが、より安定的な資産形成につながるでしょう。

つまり、「長期で投資を続けて複利効果を活かし」、「複数の資産や地域に分けてリスクを下げ」、「毎月自動で積み立てることで感情に流されずに続ける」。
この3つの原則は、投資の基本であり、誰にでも再現しやすい資産形成の方法の一つとされています。

まとめ:迷ったら「長期・分散・積立」に戻ろう

投資にはさまざまな方法がありますが、迷ったときは「長期・分散・積立」という基本の原則に立ち返ってみるのも一つの考え方です。

  • 「長期」= 時間を味方につけて、ゆっくり育てる
  • 「分散」= 偏りを避け、リスクを抑える
  • 「積立」= 習慣化して、無理なく続ける

どんな商品を選ぶか以上に、「どのように投資を続けるか」が成果につながる大切なポイントになります。
だからこそ、「長期・分散・積立」は、初心者にも経験者にも通用する、普遍的で本質的な戦略なのです。

次回予告

次回は、「どれだけ増える?資産運用のシミュレーションで未来を見てみよう」をテーマに、具体的な数値とシミュレーションを用いて「どのくらいの期間で、どれくらい資産が増えるのか?」を可視化していきます。

柴田 充輝
執筆者
柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1000記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。